こんにちは。東京都板橋区を拠点に消防施設工事業・管工事業を営んでおります奥崎工業株式会社です。消防施設工事業は、消防法で定められている消防用設備等を建物に設置し、正常な状態が維持できるようにメンテナンスしていく、とてもやりがいのある仕事です。奥崎工業は消防用設備等の中でも消火設備に特化した工事業務を行っております。
昨年7月から消防用設備等の設置工事を進めてきた新築工事の建設現場において、2月2日に消防検査が行われました。
消防検査は、建設現場におけるメインイベントのひとつであり、工事全体の集大成ともいえる検査です。建設現場の地域の所轄消防署によって現地確認の上で行われる検査であり、建物を利用するにあたって火災に対する安全性が確保されているか念入りに検査されます。
私共が請け負った消防用設備等についても、適切に設置されているか、問題なく機能するか、運用上において不備や不具合などが無いか、といった観点から検査が行われます。当建設現場においては、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備、連結送水管、消防水利、移動式粉末設備、消火器などの設置工事について、施工と施工管理を請け負いました。これらの消防用設備等についても、設置状況や状態の検査、機能の検査などが行われました。消防検査に間に合うように設置工事を進め、指摘事項がないように注意して設置工事を進めてきました。どの建設現場においても常に消防検査を意識して取り組んでいます。
結果として、今回の設置工事では指摘事項はなく、問題なく検査に合格することができました。消防検査が無事に終わると、安心感から全身の力が抜けるほど気が抜けます。そして、達成感が湧きます。私共の業務にとっては消防検査は重大なイベントのひとつなのです。工事担当者である消防設備士にとっては、消防検査を指摘なく無事に終えることが消防用設備等の設置工事を担当する上での目標のひとつではないでしょうか。
「消防検査」とは?
消防検査は、消防法第17条の3の2に定められている消防用設備等を設置した際に実施される消防機関による検査のことを指し、「消防用設備等の設置完了検査」を略した呼称です。建設現場の地域の所轄消防署によって行われ、主に予防課の消防官の方々が担当します。すべての建設現場で消防検査が必ず実施されるとは限りませんが、原則は義務化されています。
消防検査が義務化された背景には、1973年11月に熊本県熊本市で発生した熊本大洋デパート火災が契機となり、1974年6月の消防法改正がなされ、それに伴い消防用設備等に対する消防機関による完了検査制度が導入されました。熊本大洋デパート火災は死者104人負傷者67人におよぶ大惨事でありましたが、火災時には消防用設備等が適正に機能しなかったとされています。なお、法改正では消防検査の義務化のほか、一定規模以上の防火対象物における消防用設備等に対する消防設備士による定期点検報告制度が導入されました。そして、消防用設備等の設置については消防機関、消防用設備等の設置後の維持管理については消防設備士、という検査・点検の体制が構築されました。
「消防検査」を受ける義務が生じる防火対象物
防火対象物とは、消防法第2条第2項に掲げられており、山林・舟車・船渠もしくはふ頭に繋留された船舶・建築物その他の工作物、またはこれらに属する物、と定められています。これらには防火に関する規制が適用されます。防火という言葉が使われていることから、燃えると火災となって被害を生じる恐れがあり、そのために火災を防止すべきものとして法的な規制を課す必要がある対象物、という意味が含まれています。そして、防火対象物は、消防法施工令令別表第1(下記、一覧表を参照)によって用途によって具体的に分類され(1)項から(20)項までが掲げられています。
防火対象物は、特定防火対象物(表の水色部分が該当)と非特定防火対象物(表の水色以外の部分が該当)に分けられています。
特定防火対象物は、不特定多数の人々や身体的弱者が利用することにより、火災の発生の危険性が比較的高く、また火災時の消火活動、延焼防止、避難活動が難しいため、人命の損失や物的な損害をもたらす恐れが大きい建築物や施設が該当します。そのため、消防用設備等の設置基準が厳しく、既存のものでも消防用設備等の設置と維持に関する規定が遡って適用(遡及適用:法令の規定が改正された場合に、既存の防火対象物を改正された新基準に従って造りなおさなければならないことをいう)となり、つねに現行の規定に基づいて消防用設備等を設置、維持しなければなりません。
非特定防火対象物は、学校、図書館、美術館、神社、工場、倉庫、事務所など特定防火対象物に当てはまらない建築物や施設などが該当します。原則は遡及適用されませんが、自動火災報知設備やガス漏れ火災警報装置、漏電火災警報器、非常警報器具と非常警報設備、誘導灯と誘導標識、簡易消火用具など一部の消防用設備等については遡及適用されます。
ほかに特定一階段等防火対象物があります。特定一階段等防火対象物は、(1)項~(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、に掲げる防火対象物の用途部分が、避難階以外の階(1階および2階は除く)にある防火対象物で、その避難階以外の階から避難階または地上に通じる階段が1つのものをいいます。
消防検査を受ける義務は、消防法第17条で定める設備等技術基準に従って設置する消防用設備等を設置した場合に生じ、設置した旨を消防庁または消防署長に届け出た上で消防検査を受けなければなりません。そして、消防法施工令第35条において、以下の4点のいずれかに該当する防火対象物について、消防検査の実施が義務づけられています。
①延床面積に関わらず、自動火災報知設備の設置義務のある用途の建物
②特定防火対象物で、なおかつ延床面積300㎡以上の建物
③非特定防火対象物で延床面積300㎡以上、かつ消防長または消防署長が指定した建物
④特定一階段等防火対象物
おおまかには、カラオケボックス、旅館やホテル、病院、高齢者福祉施設、11階以上の建物、そのほかの用途で延床面積300㎡以上の建物、などが該当します。
「消防検査」の目的
消防検査の目的は、消防用設備等の設置状況や状態、機能の状態などについて、消防用設備等の設置段階あるいは建物の使用開始前に検査することです。消防用設備等に不備や不具合がないか、消防法に準じているか、未設置の消防用設備等がないか、建物を運用していく上で問題がないか、などを確認します。また、設置工事においては、消防協議を行い、協議した内容に沿って進めていかなければならない部分もあります。設置工事を開始する前、設置工事を進めていく中で、消防用設備等をどのように設置するか、計画上で設計者や消防設備士などの工事担当者では判断できない部分も出てきてしまいます。それらの問題は、建物の仕様や施工に関わってくる事柄なので、事前に所轄消防署と協議し、指導を仰いだ上で設置工事を進めていきます。その際には消防議事録を作成し、協議した内容を明確化した上で記録として残します。消防検査では、その内容に沿って適正に設置工事が進められているか、といったことも確認します。
「消防検査」の検査内容
当建設現場における消防検査は、2日間にわたって行われました。私共が関わった消防用設備等の設置工事に関する検査は、1日目に外観検査と機能試験、2日目に総合連動試験を行いました。
【外観試験】
スプリンクラー設備:スプリンクラーヘッドの配置と員数の確認
屋内消火栓設備:配置と員数、機器の型式・仕様の確認
連結送水管:配置と員数、機器の型式・仕様の確認
移動式粉末設備:配置と員数、機器の型式・仕様の確認
消火器:配置と員数、機器の型式・仕様の確認
【機能試験】
スプリンクラー設備:末端試験弁操作による起動確認、性能確認
屋内消火栓設備:放水試験と性能試験
連結送水管:耐圧および放水試験と性能試験
消火ポンプ:機器仕様の確認、性能試験
【総合連動試験】
受変電設備や非常用発電機などの設置工事、配線工事、試運転などが完了し、受電後の竣工前に行う各設備の連動試験です。火災起因による火災停電時の動作、大規模災害時のインフラ停電後の火災進展を想定した一般停電から停電火災時の動作、などを確認する試験です。火災発生、通常時、停電時、復電時の一連の流れを想定し、その中で建物に設置された設備が適正に機能するか試験します。消防用設備等も一連の動作の中に含まれます。
以上の検査は、消防用設備等の設置工事が完了した際に所轄消防署に提出する「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書」に記してある内容と整合性を確認しながら進めていきます。
消防検査における消防用設備等に関する検査は、現場にもよりますが、大方の現場では特別なことがない限り、外観検査、機能試験、総合連動試験の3項目が検査されます。
「消防検査」に臨む上での準備と対応
消防検査に合格すると消防用設備等検査済証が申請できるようになり、申請して数日から1週間程度で発行されます。消防用設備等検査済証は、消防機関から発行される消防用設備等が消防法に準じて適正に設置されていることを証明する書類です。建物を利用する上で必須な証明書類であり、発行されないと建物を利用することができません。もし、消防検査で指摘事項があった場合は、消防用設備等検査済証が発行されません。消防用設備等の設置状況や状態に不備や不具合があり、建物が利用できる状態ではないということになります。その際には、早急に指摘事項に対する是正対応を行わなければなりません。竣工引き渡しまで時間がない中、大きい問題のある指摘を受けてしまうと是正対応が大変です。指摘内容によっては、多くの業種を巻き込んでしまう手間と時間を要する是正対応も出てきてしまうかもしれません。そのようなことは絶対に避けなければなりません。
消防検査に臨む準備として、消防検査の前に自分自身の目で検査を行う消防官になったつもりで現場を確認し、予め指摘を受けそうな事項を想定し、その対策を検討しておくことが必要です。可能であれば消防検査前に改善したほうが良いです。もちろん指摘などを受けないように万全を尽くした上で消防検査に臨むわけですが、中には建物が出来上がり周囲の環境が仕上がってこないと設置状況や状態が見えてこない部分もあります。指摘を受けないことを前提として準備してきても、もしかしたら…。ということもあります。なぜなら、検査を担当する消防官によって指摘する度合いも変わってくるからです。ですので、消防検査の当日は、できることならば指摘を受けた場合も想定し、是正対応に用いる可能性がある材料を準備しておき、現場作業員(配管工)を手配しておいたほうが良いかもしれません。
建設現場と消防機関の関係性
建設現場においては、工事全体を進めていく上で最初から最後まで所轄消防署との連携をとっていく必要があります。所轄消防署との信頼関係を築いていく必要があり、良い関係を保つことが大切です。信頼関係が築けている建設現場は、工事全体がうまく進んでいきます。例えば、着工前に工事全体の計画や工期を伝えておく、計画段階で消防法に準じる必要がある事項について擦り合わせておく、届出の必要がある書類について内容を確認し期日通りに提出する、消防検査の日程を円滑に調整する、計画上で設計者や消防設備士などの工事担当者では判断できない事項は消防協議を行い明確化しておく、などきちんとした誠実な対応をして共有していくと、所轄消防署からの信用も得ることができ、その先にある建設現場の工事全体の運営に対する信頼も得られます。担当する消防官からすると、信頼できる工事担当者が進めている現場は厳しく指導しなくても問題なく誠実に工事を進めているはずだ…。というような心理になります。そうすると戒めるような厳しい指導を受けることも減ってきます。ただし、大前提として所轄消防署の指導は、建物を利用する人々の人命と安全を守り、安心して利用してもらうための重要かつ重大な事項なので、指導内容に対しては最善を尽くし、誠実に対応していくことが必須なのです。
建設現場における「消防設備士」の立ち位置
消防設備士の存在は、所轄消防署との信頼を築く上で欠かすことができません。所轄消防署と消防協議などを行う上では、専門的な知識を要する議題が多いため、消防法や消防用設備に関する知識が必要になってきます。建設現場では、所轄消防署と協議する議題に関する問い合わせが、設計者や元請けの工事担当者から消防設備士にきたりします。場合によっては、所轄消防署との協議に消防設備士が同席することを依頼されることもあります。そういった中で、所轄消防署との連携を図っていきます。消防設備士は、建設現場におけるアドバイザー的な役割として、建設現場と所轄消防署を繋ぐ橋渡し的な役割も担っています。そして、なによりも消防設備士には、建設現場における重要な役割があります。それは、消防用設備等の設置工事を行うこと、設置工事に着手することです。
消防用設備等の設置工事は、消防法第17条の5、および消防法施工令第36条の2により甲種消防設備士免状の交付を受けている人でなければ行えないことが定められています。消防設備士は国家資格であり、業務に従事するときは免状を携帯していなければなりません。設置工事を行う上での運転免許証に該当します。その上で、消防法第17条の12では、「消防設備士は、その業務を誠実に行い、工事整備対象設備等の質の向上に努めなければならない」と定められており、所轄消防署からは誠実な対応を求められているのです。もし違反して不適切な工事、整備を行った場合は、免状返納命令の対象になります。消防設備士は、消防用設備等の工事に特化した専門工事業としてのスペシャリストなのです。
消防機関への届出書の提出
消防用設備等の設置工事に着手するにあたっては、消防設備士が、所轄消防署に「工事整備対象設備等着工届出書(以下、着工届)」を提出する義務があります。消防法第17条の14では、消防設備士が、設置工事に着手しようとする日の10日前までに、工事整備対象設備等の種類と工事の場所、その他必要な事項を消防庁または消防署長に届け出なければならないことが定められています。
着工届に添付する資料は、設置設備と設置工事の内容が明確に判別できるものでなければなりません。工事規模にもよりますが通例では、頭紙、現場概要、工事概要、防火対象物の概要表、設置設備の概要表、設置設備の工事の設計に関する図書(凡例・系統図、平面図など)、建築図、設置設備の仕様書、設置設備の性能に関する計算書(ポンプ揚程計算書、損失計算書、消火水槽水量計算書など)、設置設備に使用する機器類・弁類・配管継手類に関する機器図、などの資料を添付します。着工届は、消防設備士が作成し、所轄消防署に提出します。
一方、消防用設備等の設置工事の完了にあたっては、所轄消防署に「消防用設備等(特殊消防用設備等)設置届出書(以下、設置届)」を提出する義務があります。消防法火災予防条例第58条の3では、指定防火対象物等の関係者が、設置工事が完了した日から4日以内に、設置した旨を消防署長に届け出なければならないことが定められています。ここでの届出者は「指定防火対象物の関係者」であり、一般的に防火対象物の所有権を有する人とされています。消防設備士ではありません。通例では、建物の所有者、場合によってはテナントの占有者などが届出者になっています。ところが、この設置届には、消防設備士でなければ取り扱えないような、かなり専門的な内容が求められています。
設置届に添付する資料は、設置工事が完了した最終的な消防用設備等の設置状況や状態が明確に判別できる内容のものであり、着工届から情報が変更や更新された資料は改めて添付しなければなりません。頭紙、現場概要、工事概要、防火対象物の概要表、設置設備の概要表、設置設備の工事の竣工図書(凡例・系統図、平面図など)、建築図、設置設備の仕様書、設置設備の性能に関する計算書(ポンプ揚程計算書、損失計算書、消火水槽水量計算書など)、設置設備に使用する機器類・弁類・配管継手類に関する機器図、設置設備に関する試験結果報告書、非常電源試験結果報告書、配線の試験結果報告書などの資料を添付します。結果的に設置届も、消防設備士が作成し、届出者の代行として所轄消防署に提出します。
消防検査の立ち合い
消防検査には、設置工事を担当した消防設備士が立ち会わなければなりません。それは、実際に消防用設備等の設置工事を担当し、設置した消防用設備等について熟知し、建設現場と所轄消防署との協議内容を共有し、設置届の作成者だからです。消防検査では、設置されている消防用設備等の設置状況や状態を現地確認の上で検査し、設置届の内容と検査内容に整合性があることを確認していきます。設置届は、竣工図書として運用時に保管され、建物の維持管理に用いられます。検査時に消防官に対して設置した設備について説明し、疑問などに対応するのも消防設備士の役割です。消防検査に問題なく合格できるかどうか、消防設備士の裁量にかかってくる部分も大きいのです。
以上のことから、建設現場における消防設備士の役割は重要であることがわかります。消防設備士がいなければ、所轄消防署と良い関係性を築くこと、消防用設備等の設置工事を行うこと、設置工事に着手すること、設置工事を完了すること、などができないということになります。消防設備士は、建設現場においては欠かすことのできない人材なのです。
消防設備士は、社会から求められる重要な役割を担う、「やりがい」のある誇れる仕事なのです。
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